「なんとなく疲れが取れない」「心が落ち着かない」――そんなときに役立つのが、アーユルヴェーダやヨーガで伝えられてきた呼吸法(プラーナーヤーマ)です。
呼吸は単なる酸素の出し入れではなく、生命エネルギーであるプラーナ(気のようなもの)を取り込む行為。
アーユルヴェーダでは、このプラーナの流れが乱れると、心身に不調や疲労感が生まれると考えます。
ここでは、日常に取り入れやすい呼吸法をいくつか紹介します。
1. ナーディ・ショーダナ(片鼻呼吸法)
もっとも代表的で、心身のバランスを整える呼吸法です。
「右の鼻=太陽、活動」「左の鼻=月、安らぎ」を表すとされ、交互に呼吸することでドーシャの調和をはかります。
やり方
1. 楽な姿勢で座り、右手の親指で右の鼻を閉じる。
2. 左の鼻からゆっくり息を吸う。
3. 今度は薬指で左の鼻を閉じ、右の鼻を開いて息を吐く。
4. 右から吸って、左から吐く。
5. これを1サイクルとして、5〜10回繰り返す。
👉 不安や緊張が強いとき、寝る前に行うと心が落ち着き、深い眠りにつながります。
2. シータリー呼吸(冷却呼吸法)
夏の暑さや、体や心に“熱”がこもっているときにおすすめ。
「シータリー」は“冷やす”を意味します。
やり方
1. 舌を筒状に丸め(丸められない人は歯を軽く噛んで隙間を作る)、口からゆっくり息を吸う。
2. 吸った空気を一瞬喉にためるようにしてから、鼻からゆっくり吐く。
3. 5〜10回繰り返す。
👉 ピッタ(火のエネルギー)が高まっているとき、イライラやのぼせを感じるときに効果的です。
3. ブラーマリー呼吸(蜂の呼吸)
心を静め、不安やストレスを和らげる呼吸法。蜂(ブラーマラ)が羽音を立てるような低いハミングを響かせながら行います。
やり方
1. 背筋を伸ばして座る。
2. 深く息を吸い、吐くときに「ンーー」と鼻に響かせるように声を出す。
3. 音の振動が頭や胸に広がるのを感じながら、5回ほど繰り返す。
👉 不眠、頭の中の雑念が止まらないときにおすすめ。頭がスッと軽くなる感覚があります。
4. カパラバティ(頭蓋を輝かせる呼吸法)
少しアクティブな呼吸法で、体を目覚めさせたい朝に向いています。強めの呼気で不要なものを吐き出し、心身をクリアにする効果があります。
やり方
1. 楽に座り、鼻から深く吸う。
2. お腹を引き締めながら「フッ、フッ」と短く強く吐く(吸うのは自然に入ってくる)。
3. 10〜20回を1セットとして、慣れたら回数を増やす。
👉 sluggish(停滞感)や眠気が強いときに効果的。ただし妊娠中や高血圧の方は控えましょう。
5. アーナンダ・プラーナーヤーマ(感謝の呼吸)
伝統的な方法に加えて、現代的に取り入れやすいのが「感謝の呼吸」。
深い呼吸と共に、心の中で「ありがとう」と唱えるだけです。
やり方
1. 背筋を伸ばし、両手を胸の前で合わせる。
2. 息を吸うときに「新しいエネルギーを取り込む」と意識。
3. 息を吐くときに「ありがとう」と心で唱える。
4. 5分ほど繰り返す。
👉 感情の停滞をほぐし、心を柔らかくする効果があります。
呼吸法を行うときのポイント
• 空腹時、静かな環境で行うのがベスト。
• 最初は短時間でもOK。毎日続けることが大切。
• 力を入れすぎず「気持ちいい」と感じる範囲で。
アーユルヴェーダにおける呼吸法は、単なるリラクゼーションではなく、身体と心とエネルギーを整える知恵です。
• ナーディ・ショーダナ → バランスを整える
• シータリー → 熱を冷ます
• ブラーマリー → 心を静める
• カパラバティ → 活力を生む
• 感謝の呼吸 → 心を柔らかくする
日常にほんの数分取り入れるだけで、心身の軽やかさが変わります。
“呼吸”というもっとも身近な行為から、アーユルヴェーダの智慧を生活に活かしてみませんか?